ばらと遊ぶ12ヶ月 5月

1. 季節のお便り

 3月初旬に5月号の原稿を書く。多分この頃はこうなっているだろうと思いながら書く。去年からの心の準備が出来ていればだがそれもない。 どうもリアル感に乏しいのが気になって仕方ない。

 春の花が一段落し、秋のように名残を惜しむ暇もないくらいに2番花がやってくる。どうしようか、秋までどう組みたてていこうかなどと思いながら過ごしているのがばらキチの面々であろう。

2. 一番花後の手入れ

イ. 消毒

 春の一番花の時期を過ぎて、気候も本格的な暑気に向かい始めると、スリップス、ダニなどの耐性をもつ虫害はもちろん、ウドンコ、黒点、べと、灰色カビ、サビ病などの病害がそこそこの環境に順応してわがもの顔でやってくる。

 花に遠慮して消毒も控え目であったが、これからは病虫害から葉を守るためにやや濃い目に、10日以内のインターバルを絶対にくずさないように、消毒を励行しなければならない。

 消毒薬は去年の「ばらだより」の連載手入れ記事で高野浩氏が詳しく書いておられるので省略したいが、考え方だけを書いてみたい。

 消毒はうまくいって当たり前の世界である。これが毎年毎年何かで必ずつまづいて悔し涙にくれるのが実情である。だから、大きなことは言えないのであるが、理屈は理屈である。一応は押さえているつもりであるものだから参考にして頂きたいと思う。

 まず第1に、あらゆる病虫害を定期防除の暦に組み込むことである。よく、ダニやべと病は来たときにやればいいという考えがある。病虫害は絶対に予防である。治療ではいけない。治療の考え方で手入れしていると蔓延して手がつかなくなる場合が多い。そうでなくとも秋のばらなどとても期待できなくなるダメージを受けることが多い。その意味では「治療の名医」になってほしくない。「予防の名医」になって実行してほしいのである。

 第2に耐性の問題がある。厄介な病気ほど耐性が出来て効かなくなる。ミラネシンがウドンコに効かなくなった話やオルトランがスリップスに効かなくなったことをときどき耳にする。ロディーを使うと他のピレスロイド系の殺虫剤が全く効かなくなるという話も聞く。同様に葉ダニの驚くべ き環境順応力やべと病菌も耐性をもっている。

 このようにわれわれは経験によって彼らが並々ならぬしぶとさがあることを知っている。だから、耐性の出ないように消毒薬を使っていかねばならない。そのために各疫病、虫害とも少なくとも4種以上は準備しておくことが必要である。そして記録を取って、その消毒薬は必ずローテーションを守って使用することである。

 第3に薬害の問題である。新薬を購入しようとするとき、わたしは決まって切花業者にその消毒薬を使っているか必ず尋ねることにしている。理由は切花業者は新芽新葉展葉のときと、開花のときが同時進行しているからである。ちょっとでもおかしな動きがあれば口コミでたちどころに業者間に広がり不確な情報もおりまぜて流れるが、「おかしな話が何もない」ものしか使わないことにしている。

 それと自分で確かめる方法としては使った薬剤で自覚症状が出れば、その組み合わせをメモしておき、その薬剤のコンビネーションを替えて特定しておくとよかろう。 消毒前と消毒後の葉の状態をよく観察することである。またダニ用にルーペ だけは用意した方がよい。わたしの持っているものは15倍であるが、老眼になるとスリップスも見えなくなる。

 第4に消毒にかかわる雰囲気時間である。わたしは現在、2棟で260㎡を100リットル散布しているが、 時間は20分で終了している。25気圧の動力噴霧器を使うが、ノズルが霧状になるほど人体も消毒されることになり無気味である。マスクはするが皮膚の一部や眼は露出している。大丈夫といっても雰囲気時間だけは短くしなければと思う。

 ノズルも永く使うと噴孔が大きくなっているので注意が必要である。去年交換していないならば新品と交換して噴霧状態を比較してみられては如何であろうか。

 最近になって天井を走行しながら自動噴霧して いく機械が低コストで開発されたと聞くので非常に興味があるが、消毒は葉の裏からかけることになっているので効果が果たしてどうかである。それは高圧にしてすごく細かいミストにすることで OK ということである。機会があれば紹介したい。

 最後に蛇足かも知れぬが、薬効一時間の関係についてである。案外知られていないかもしれないので書いておきたい。

 一般に農薬は原液、個体の製品では安定である。品質保証期限を過ぎても極端に効果が下がることはまずないが、少しでも水で希釈して手を加えると極端に安定度がなくなる。例えば水和剤を計量するのが煩わしいといって3000倍で使用のものをとりあえず100倍に薄めておいて、使うときにあと30倍に薄めて使っても数字上では3000倍であるが、こうした使い方は間違いである。農薬は複雑な工程によって最終製品になっているので安定性は乏しい。水で希釈して長時間放置すると加水分解反応が起きて、薬効の全くない物質になってしまう。 ある農薬を実際に加水後放置して分析してみると、4時間では80%以下、12時間後では50%以下になってしまったという知見がある。各農薬とも1,000倍に希釈したら何時間保障しますとは書いてない。だから、調合したらすぐに短時間に終わらせるのが大切である。同様に4薬5薬と農薬を混用すればするほどこの傾向は強くなるので、経時反応を避けるためにも迅速に消毒は完了すべきである。

口. 2番花の準備

 冬の剪定枝から出た一番花は高さ110cmまでに咲いている。そのとき葉は13段前後付いているので、切花にして短くなって2〜3段になっていようが、庭で花を見て13段のままだろうが、秋の剪定位置を下葉15段〜20段を確保した所にする、または高さ120cmのところにすることを基本において2番花を咲かせればよい。気を付けなければならないのは庭で花を見た枝は10段くらい残してその上に咲かせるので、そこから15段つなぐと25段にもなり、勢いの静まった2〜3年枝では下葉が落ちる傾向になる。注意が必要である。花の勢いを落とすことなく、秋も比較的低い所に開花させるためには春の枝の最下部を落葉させないことが大切である。

ハ. 追肥

 1月号で述べた肥料をくれている限り、追肥の必要はない。籾殻を敷いているだけに発酵腐熟の進むときに窒素飢餓を起こし、窒素を取りこむので一時的に肥料が足りなくなる。 これは去年の全国展バスツアーの中で紹介していただいた青森の工藤公男氏からのノウハウであるが、青森と九州では気候条件が全然ちがうので、窒素飢餓がいつごろ起こるかは気にはなっている。草取りは敷き藁よりはるかに楽で随分助かっている。

二. 灌水とシュート

 灌水はシュートが出てくれるまで手を抜かずに頻回にやりたい。 よほど水はけが悪くないかぎりは多灌水のために根腐れを起こすことはない。 露地で雨の降らないときはどんどんやることをすすめる。ハウスでは定期的に坪あたり1週間に100リットルは与えるように。

 一昨年、大牟田市の某氏宅にわたしの成木を20 株ほど移植した。某氏は漢方薬をやっているのでその薬草抽出後の追肥を入手出来る。それとア ダージオぼかしとSCコーティング肥料を敷き、さらに基材としてネニサンソ(パーライト)を混ぜて生育をみたところ、驚くほどのシュートが乱立しびっくりした。幾分多肥気味だったことは確かだが、移植株がこうもなるとは信じ難かった。赤土で保肥力はあるし、鉄分も十分だし、pHも多分6位だろう。シュートがそれだけ出るというのは根の活性がいいということである。

 根の活性が良すぎると駄花の確立が高いというのが従来の栽培上の常識となっているが、その年はそうかもしれないが、ずーっとではない。多灌水によってシュートを誘うのは多肥にしてではなく、施肥を効率的に使い、肥料切れを促しているのであるから、理屈にあっている。お化けのようなシュートの乱立をさせて、若い頃のことを懐かしく思い起こすのもいいじゃないか。わたしは羨ましくもなった。

3. リアルタイムでいくと

 これは2月号3月号で紹介してきた福島氏指導による佐世保市在住、西村氏のコンテナー仕立てばら新苗の成育状況を紹介したものである。まず、西村氏の原稿から。

 すっかり春めいてきました。その後如何お過ごしでしょうか。先日の天草では大変お世話になりました、とても楽しい一日でした。ばらの話で皆様とても楽しい時を過ごしていらっしゃるのですね。わたしも少しだけそのときを体験させていただいて、いまから楽しいことが増えたみたいです。 (ばらだけではなくて......。)

 福島師匠のおかげでやっとハウスの形がつきました。3月10、11日で薬剤散布用の配管、コンテナー作り、潅水用の配管。 17、18、19日で地ならし、苗の植えつけ。 22、23、24、25日で空中支柱準備、パイプ立て、空中支柱取り付け、手入れのやり方などの作業を終えました。支柱は現在200本ほど茎に結んでいます。下からシュートもぼちぼち出始めました。 HTの方は今週か、来週ぐらいで4段目のピンチが終り、あとはシュートを待つという状態です。ミニばらは次々と芽が伸びてくるので少しも目が離せない感じです。

 とにかく先のことは分らずに今は言われたことを覚えて実行、考えて実行することしか出来ません。不器用な私としては精一杯ですが、師匠からは 「学習効果が表れない。」とよく言われます。何しろテープナーをうまく使えません。まだまだその他にもいろいろ作業があって、ハウスの周りに草が生えるから舗装をするだとか、小ハウスの周りもキレイにしなければとか、言い始めればきりがないですね。でもおかげで、毎日がとても楽しいです。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

 とりあえず写真を同封いたします。原稿を書くって大変なことですよね。ご苦労様です。少しでもお役に立てば幸いです。

西村氏のハウスの全景。通路の白いマットは草取りを避けたもので文字通り防草シート。

鉢の代わりにビニール製の波板を使った。2月号で説明した空 き缶抜き取りは作業性が悪く 変更した。苗が大きくなるにつれて波板を広げて空隙部に用土を入れていく。

新苗からシュート。品種はみわく。

薬剤散布、 灌水装置。

 西村氏は文章でもお分かりのようにもちろん女性である。

 写真を見て皆さんはどのように思われるだろうか。 2月号3月号の計画は福島氏の頭の中でできた理論の世界である。しかしこのように理論が見事に実現するに及んでは筆者も脱帽せざるを得ない。

 実現にはいろいろの大きな熱が必要である。まず師弟の目標に対する共通した理解と信頼と情熱である。習う方も教える方もどちらの熱もバランスが必要である。よくあるケースとして、 教える側の思い込み過ぎで教わる側が淡白だったために熱が急に冷めたり、腹が立ったり、その逆に教わる側が熱心過ぎる割りに答が返ってこない例だって多いはずである。

 「こうこうすれば、必ずこうなるから、こうしたらどうか。」と師匠が言っても先立つ物 (お金) と体力と能力を相談して弟子は決めなければならない。 第一にこの人の言うことは本当なのだろうか。それを見極めなければならいから大変だ。

 「百聞は一見に如かず。」 写真を見る限りではすでに全国展上位入賞の環境条件は揃っている。あとは秋までどうつなぐかであるが、秋とは言わずこの春には一本切りで西武球場に持って行くかの勢いと聞いて正直のところさもありなんと思っている次第である。要するに春に1本切りした木でも秋までに1鉢に4本以上は仕立てられる木振りになっているということが驚きなのである。

次に福島氏からの若干のコメントを記す。

  1.  空中支柱の間隔を13cmから15cmに修正した。理由は手入れの関係で狭すぎたようだ。木振りから言うと 6〜7本は十分仕立てられるが、トゲを避けるために欲張らないで少なめにした。
  2.  コンテナーの配置はミニチュアもHTと同様2列に配列した。
  3.  ミニチュアは6月から咲かせることが出来そう。
  4.  防草シートを全面に敷いたあとコンテナーを配置したので、ハウス内の草取りは全く不要である。さらに通路は疲れないように軟らかいマットを敷く予定である。

(以上は4月4日リアルタイム記事である。)

4. 中輪ばら切花

 ばら栽培者は「ばらキチ」という既往症がある。そしてしばらく病気が長引くうちに必ずといっていいほど自分もばら栽培をしてみようか。などと考える時期がある。特に、筆者のばら熱の頃はまだまだ花産業が急上昇を続けていた時期であったし、魅力溢れる仕事のようでもあった。「いっそのこと、......ればどんなに楽しかろう。 趣味と実益 が一致して。」 しかし、いろいろ考えていくうちにそう甘いものではないことがわかってくる。ばらを趣味とするわれわれと切花を業とする生産者との決定的な違いは「作った物を見ることと、作った物を売ること」である。 われわれは見るために最高のものを作ろうとするが、一方は買ってもらうために作るのである。自分では作ったものを最後まで見届けることは出来ないという宿命がある。ばら好きの人が生産者になってしまった例を何人か知っているが、この現実ははるかに厳しい。切花を人に上げようとするときも家人からいつも笑われる。「もっと若い花を切ってくださいよ。」 と。しかし、筆者はなかなかそれができないので「あなたはケチ」呼ばわりをされてしまう。どうしても16歳の娘を嫁にやることが出来ないのだ。

 最近は、韓国、中国から空輸でばらがどんどん入ってくるようになった。安い人件費で競争力をつけてきたわけであるが日本の商社系を通しての技術ノウハウも浸透し、品質的にも遜色のないものが生産され始めたようだ。そのため日本のばら切花業者はいま以上に品質を高め、維持しなければ競走に勝てなくなっているという厳しい現実がある。

 さらに都合の悪いことには、自己資金による営農者が少ないことも競争力を弱めている大きな原因である。最近流行した水耕栽培法は施設園芸のため、安い商品と高金利負担の悪循環となってさらに生産者を苦しめている。

 そうした中で、従来の露地栽培業者は自己資金体質が多く地味であるが独自の歩き方をしている。筆者の住む南関町にはばら生産者が10人程度いた。最近になって、3人ほど転廃業しているが、露地栽培が主体である。A氏に話を聞いた。

問:露地栽培ではどのくらいで更新するか。
答 :ローテローゼは12年間更新していない。 更新したものも7年以上は経っている。

問:これは驚きだ。咲いては切り、咲いては切りのため寿命が短いと聞くが、どのようにコントロールしているか。4〜5年しか持たないのが常識と言われているようだが。
答 :特別のことはやっていない。100%切れるものは90%に押さえている。収量は多少落ちても品質ベースに考えて納得している。土や木の顔を見ながらゆっくり気長に付合うことにしている。

問:木の休息はいつどのくらい取っているか。
答 :夏の7月15日から8月15日までの1か月だ。これは花が極端に悪いからである。

問:肥料は元肥をやるのか。
答 :うちは最初の頃、肥料はしこたまやったの で、できるだけ減らした管理をしている。カリやリン酸は結構残っているので随時調子を見てからカルシウムや窒素を補って行く程度である。

問:肥料は何をやっているか。
答 :7-7-0 とか 7-8-0 とか肉骨粉主体の動物質の有機である。いまから夏まではバクテリアが活動するので、肥料は必要ない。

問:開花サイクルはどの位か。
答 :夏の切り始めは35日。早いのは30日位だろう。冬は60日以上はかかる。

問:年間にどのくらい採れるものか。
答 :わたしは大体6回である。品種によっては7回もあるが、回数を上げても品質が落ちるから意味がない。

問:設定温度は。
答 :冬は昼間で20°C、夜は17°Cだ。その他火を焚かないときは自然任せであるが、暑いときは直射日光を当てない配慮をしている。

問:広さはどのくらいか。
答 :880坪でガラス3連棟が1つ、 ビニール3連棟が2つ。紫外線カットしたもの、しないもの両方使っている。

問:十耕で12年も更新なしというのには正直驚いている。何かコツは
答 :うちの土地は赤土もあるが大部分は灰土だ。根が伸びきれないので、勢いもよくない。日頃の土壌の管理には気を使う。簡単に言うとピートモス (未調整品)を使って、CECを上げること位か。

問:灌水はどの位か。
答 :時期によって異なるが、1回に10トン/反 (敷地面積)程度だろう。今の時期は2週間に1回くらいだ。

問:何本植えているか。
答 :うちは密植だ。坪で20本。20cm間隔で2条植えである。

問:密植でも疎植でも開花本数は同じと思うが。
答 :その通りだ。しかし、保険の意味もあって、咲かない木を隣の木が助ける目的もある。嫌地現象のために新植してもすぐにはうまくいかないこともある。

問:大体何本くらい咲くか。
答 :坪300本。反当90,000本が相場であるが、うちは多分坪当り250本程度ではないかと思う。

問:通路を含むのか。
答 :もちろんだ。通路を含み計算する。

[著者註: わが65坪のハウスに換算してみると、250(本)×65 (坪) ÷ 6(年6回) = 2,700本。つまり1回では2,700本も咲いていることになる。これはあくまで中輪系の切花である。ところで我が家のHTではどうか。2,000本足らずが関の山である。もちろん少し少ないなと思っている]

問:水耕栽培、土耕栽培の特徴は。
答 :水耕はボリューム、背丈、花の大きさに優れている。一方土耕は花持ち、花色、花型に優れていると思う。収量は水耕が圧倒する。

問:消毒についてだが。
答 :消毒は徹底して予防でいく。土のバランスが取れていれば病害は半分程度しか出ないと思う。これはニュアンスで言っているが。

問:灰色カビとべと病だが。
答 :水と肥料の多いところで多発する。それと面白いのは、発生する所は毎年同じ所だ。寒気の悪いところ、雨が降り込むところ。かかりやすい品種とかかりやすい場所がある。べと病は危ないなあと思う時期がある。雨が続いて消毒しにくいときは、火を焚いて湿度を切ってやる事が大事だ。

[筆者註: 言われるようにべとの出るところは毎 年同じ所である。面白いと思う。]

問:スリップスはどうか。
答 :最近、フィトンプラスという、ハーブ系の匂い誘引剤が出た。この剤とスリップスをかけると土の中にいるかけ残りのスリップスも匂いでつられて出てきて死んでしまう。夏の咲かせっぱなしがスリップス蔓延の場所だ。冬は低温のため、花同様世代交代が遅れるので、秋口に撲滅しておくとよい。

問:ばらの保存温度は何°Cか。
答 :ちは33〜4°C。

問:保存期間はどのくらい持つものか。
答 :出荷は2〜3日ごとだから試験程度の知見だが、持たせようとすれば1か月以上は大丈夫。ただし、花は多少は動く。

問:冷蔵庫でボトリチスが出るが。
答 :それはハウス内でボトに感染しているからだ。

問:花が消費者に渡るまでの時間は。
答 :今日出すと、明日がせりにかかる。するとその日の午後には店先に並ぶことになる。生産者の所で貯蔵されている時間がどのくらいか。それと店先に並んでいる時間がどうか。

問:せりのときに花持ちの良し悪しはわかるものか。
答 :ベテランの花屋さんはわかるらしい。だからいくら信用があるといっても毎回毎回試験を受けているようなものだ。

問:切花延命剤は使うのか
答 :使わない。使うと水揚げは良くなるが展開が早い。

問:われわれの栽培している大輪花は市場に出ないようだが。
答 :これは当然の話だが、ばら栽培家は収量と価格の関係で収入のいいものを栽培する。大輪は花はきれいでも使用する裾野が広くないので汎用性で需要がない事が一つ。それと価格が飛びぬけ て妙味があればの話だが、大して違わない。結局中輪のなかで数が取れて値段がいいものを生産者が選択して栽培することになる。

問:中輪のスプレー咲きなど見かけないようだが。
答 :水耕ではあるが、土耕ではあまりない。こんな目の変わったものは値段もいいし喜ばれる。

問:これから切花はますます苦しくなるようだが。
答 :創意工夫のない業者は次々に淘汰されていくだろう。以前、水耕栽培がもてはやされた頃、施設を借金してはじめた者は非常に苦しい状態になっている。自分は古いかも知れないが農はやは り土だと思っている。収穫農法では長続きしない。土や木と馴染みながらバランスのとれた生産をしなければと常づね考えている。

以上


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