ばらの品種について ー4

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舞 扇

 樹は大きく背丈もぐんぐん伸びる。花はぼて気味だが、時としてハッとするような花になる。


マダムサチ

 小振りだが、すっきりと咲く。清潔感がすばらしい。花弁が強く、長持ちもいい。早咲きの品種である。フランス メイヤンの作。鈴木善幸元総理夫人に献呈された花。


マダムビオレ

 紫色の花といえば、まずこのビオレを上げねばならない。花型がよく、樹勢も強健でグングン伸び上っていく。花数も多い。ただ、欠点は紫色にはめずらしく、香りがないことである。また九州では花が大きくならず、小型に仕上がる。

 よく咲くと弁端が茶褐色に色づき、貫禄をまして見事である。


マチルダ

写真映りよく、そのかわいらしさは人目を惹き、一度で好きになる花である。花持ちもよく、色の芸をするのであきない。フロリバンダ中の名品である。

 真ん中の主蕾が白く終わろうとするとき、副雷がそれに代わって咲き始める。その雰囲気が何ともいえない。1988年、メイヤン作。横張り性だが樹勢もたいへんよろしい。


マヌー メイヤン

 濃いローズピンクで、濃緑の照り葉をもつ。多花性で花持ちもよい。


南の関

 "フロージン'82" の枝変わり。しぼりのある品種で、唐杉の発見によるもの。突然変異で生まれた品種は親を抜けないと云われているが、コンフィダンスの子シージャックはそうではなかった。対等にいっている。この南の関も濃ピンクのベースに斑が入っており、作り込みによっては面白い花になってくると期待している。

 最近になって驚くような佳花にめぐり会った。

 2023年5月 開花

魅惑

 典型的な秋の花。真夏になると、信じられないほどの大健闘。重ねも適当にあって、花色もよく、夏にまともに見れるのはこの花だけである。だから春は大目に見てやることにしている。


メルヘンケーニギン

 「ばらはピンクに始まりピンクに終る」とは誰が言ったのだろう。以前はピンクと言えば、ロイヤルハイネスであり、ピンクラスターであり、レディラックであったが、1989年にドイツのコルデスがメルヘンを発表するにおよび、わが国では瞬く間にスターの座についてしまった。

 ここに「わが国では」と言ったのはメルヘンの美しさを爆発的に印象づけたのはわが国においてであり、ヨーロッパ各国では作出家コルデスがパテントも取っていないほど評価が低かったのである。何故か。それはよくわからない謎である。

 メルヘンを見たのは今は亡き関東ばら栽培の牽引者・近藤宏氏が3花で初めて出品し、優勝をさらったときである。今まで見たこともない色合いの不思議な魔力を持った花だという評判が残っている。 当時の関東ばら愛好家は猫も杓子もメルヘンメルヘンで大騒ぎしていたという。さらにこれは後日談だが、近藤氏は輸入で入った苗を春に3本購入し、秋に出品し、そして優勝をさらったというあたり、それだけでも氏の栽培技術とそれに応えた優秀な品種だったことがわかるであろう。

 ドイツ語の花名を日本語に直すと「おとぎの国の女王さま」ということになるらしい。この花のもつ独特の色はさながら「おとぎの国」に行ったときの出来事のように、今も鮮明に脳裏に刻み込まれている。それは何故か。1989年発表のときは1989年までに存在する花によって判断し、印象づけられるからである。これほどスッキリとあか抜けした色合いの花がなかったのである。それまではピンクの代表花はロイヤルハイネスがあっただけである。比較してみればおわかりと思う。

 一般的な傾向として、九州で栽培するメルヘンはピンクの具合が強くやや小振りになり、関東以北では色が薄いかわりに花型はずっしりと貫禄あって大きいようである。どちらに軍配が上がるか。それは九州では色はいいので出来るだけ大きく仕立てようと努力し、関東チームは花形はいいので、色を強くしようと躍起になる。お互い足りない部分を補おうとして努力するのである。そこにばら栽培の技術研鑽の面白さがある。

 我が家のように個展をやったり、各デパートあちこちでばら展を開催するときに一番多く使い、役立つのはこの「メルヘン」であり、毎年500本は咲いてくれる。メルヘンの大きな特徴は「迎え花」として素晴らしい効果を発揮することである。

 1本仕立てのメルヘンは葉のつき方に難点がある。花に近い部分で柳葉が続いていたり、3枚葉が4段も5段もついていて、花全体のバランスが悪い花になりやすい。しかし、組花では圧倒的な強さを誇るようになる。組花では1本1本の美しさよりも、集合美としてのバランスに重点がおかれるからであるが、濃ピンクの一斉美になるとこの右に出るものはない。

 メルヘンの最大の長所は無駄花がなく、計算どおりの開花が期待できることである。もともとメルヘンは樹勢の抜群に強い品種であるが、秋の気候不順の時はいわゆるブラインドになることがたまにある。それはよく観察すると品種の特性というより、勢いのない枝であることがわかる。

 もっともこの花も欠点がないわけではない。栽培当初はなかなかピンクの濃い色になりにくかったのである。最近はほとんど見られなくなったが、マニアは「白ボケ」を一番嫌う。原因がわかったわけではないが、日光照射量のせいとか、湿度過多によるとか、温度の変化具合とかいろいろ議論していたが、「作り込み」によって自然に解決していった。同じメルヘンでも色合いがかなり違うことを確かめてほしい。 ピンクが強いほどいい感じになるはずである。


モーリス・ユトリロ

 樹勢は強い方で、絞り咲きの可憐な花である。横張り型で、ステムも太くならない。


レッド・ライオン

 この花も蕾は早いが、それからがたいへん時間のかかる花だ。もともと大きいイギリス花で、ライオンのタテガミのようになって苦笑することがある。あまり大きいと品がなくなってしまう。よく咲いたときのビロード赤は褪色もせずに、いつまでもそのままで、咲き終わらない。


レディラック

 樹勢が強く、芳香性もあるピンクの名品であるが、欠点はステム立ちが素直でなく斜めに伸びていく性質があるので枝直しが必要なことである。トゲが少ないのは利点であるが、葉と葉の間が開きすぎてややバランスを欠くことがある。ともあれ、香りの良さがあり、庭に1本は欲しい品種である。


ロージー・クリスタル

 ノービーもこの花も作出は同じく千葉・船橋の小川宏氏である。色は同系統と言えなくはないが、感じは全く違う。バランスがいいだけでなく、ビロード系の美しさは何とも言えない。特に春の花がいい。


ローラ

 表弁が橙色の復色系の花。とげが多くステムも短い。武州と同系統の色であるが、ズングリした格好の悪い葉とステムのバランスを見れば、武州に一歩譲っても仕方のないところか。

しかし、この花もともと花色は武州よりも濃い橙なのと、ステムと葉間のバランスのとれた飛び切りいいローラが突如として出来ることがあるから不思議である。この品種が武州に完全に置き換わることはないだろう。独特の持ち味があるからだ。


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