ばらの品種について ー1

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あけぼの

 我が家の思い入れの品種である。あけぼの讃歌・まず、何といっても得も言えぬ独特の美しさ。どんな花かと尋ねられても困ってしまって、答えようのない花である。花弁全体が単色であれば (例えば赤とか黄色とか白とか)その色に近い色で表現できようが、複雑に混じりあった色で咲いたものは形容のしようがなく、黄色い覆輪で逃げてしまうことが多いようである。紫外線の強い日光に当たると花が焼けて外弁が黒っぽくなって嫌う人もいるが、そんなことはお構いなし。黄味を帯びた色が花芯から上がってくると、絶品となる。

 あけぼのは自然の摂理に基づいてどのようにでも芸をする。これがわがばら狂いの源泉である。あけぼのにのぼせた時期には50株ほど栽培したことがあった。なんとも言えない変幻自在の色が好きにさせたのである。

 あけぼのの品種特性は特長より欠点が多いことを知らなければならない。まず花首がすぐに曲がってしまうことである。わがハウスのあけぼのは比較的曲がり首が少なく、仲間からうらやましがられている。

 あけぼのは1964年に故・川合真一氏(日本画家・故・川合玉堂の子息である)が作出した不朽の名花であるが、ヨーロッパではそのあまりの美しさを称えて「日本のパーフェクタ」とも呼ばれる。発表されてから60年近くになるが、その品格、咲き始めの新芽の言いようのない照葉の輝き、香り、花もちなど総合的に見ても、他の追随を許すものではない。


かぶき

 花型は半剣弁高芯。弁数は45弁とやや多い。花持ちがいい所以である。

 日本の花出ではなく、フランスはメイアンの作である。高芯ではないのが当世風だ。開花から、終わりまでがやけに長い。黄色花は足が早いので、花数が多ければ有用であろう。

 作出されてからもう50年近くにもなるが、案外知られていない。樹勢は強いとはいえない。


金 閣

 金閣寺の色というので、作者は思いを寄せて命名したのだろう。花が開くにつれて、やヽ色がうすく、スジが入ってくるのが気になる。花足も早い方で3分の開花あたりで切らないと間に合わない。


クリスチャン ディオール

 ことしは夜の温度が下がり、少しはいい花になっているようだが、関西や関東に比べると九州のディオールは見劣りがする。京都の亀山氏、大阪の三谷氏の栽培するディオールは一回りも二回りも大きくて、色も堂々としたビロード赤に近いものである。東京でも徳増氏の愛培していたディオールはあまりにも有名である。それがなぜ九州に来るとそう咲いてくれないのか。

 京都の亀山氏のところは、東山の近くの京都盆地の真中で昼間の温度は高い筈。南関の気候とさして変わらないと思うのだが、どこが違うのだろう?


ゴールデン ハート

 半横張り型で樹勢が強いため広いスペースが必要。花数も多いが、泣き所はトゲがしつこいことである。黄色の花の中では花持ちはいい方である。

 九州西南暖地で黄色を強く出すのはどだいムリというのが通説となっているが、時として花型よく、大きくなっても色が薄くならない場合がある。遅咲き品種であることは黄色共通である。


コンフィダンス

 われわれコンテスト仲間の間で「ばら」と言えば、まずこのコンフィダンスである。1950年フランスのメイアンがこの花を発表してからすでに70年が経っているが、依然としてこの花の一番人気は衰えていない。香り、色(ピンク系の覆輪で、気候環境条件によりいろいろの芸をする)、バランスなど良く咲いたときのこの花の威容は断然他を圧倒してやまない。何がどういいのか、表現しようとしても言葉では言い表せない。まず、秀花を見ること。そうすればすべてが伝わってくるから不思議である。

 最も美しく良く咲いたときのコンフィダンスとガーデンパーティとシージャックと、さてどれが最高のものになるか。これはわれわれコンテストの気狂いメンバーがつい面白半分で言い合うことである。

 昔の文献を読んでいると、審査員10人が10人満票で一位に推したコンフィダンスのことを書いてある。これなどわれわれが究極の理想にしている完全な花に到達できた例であろう。それはどんな花だったのか、今でももし再現できたら見てみたいものだと思う。

 コンフィダンスは風に弱く、葉が脈打つし、黒点病にはかかりやすいし、ハウスでなければ相当の手間がかかる。しかし、実際は本気で作ると露地には勝てない筈という人がある。多分そうだろう。

 コンフィの泣き所は秀花になる割合が極めて低いことが上げられよう。我が家で栽培するコンフィは、以前は20株200本は咲いていたが、そのうち佳花は1本出るか出ないかで、他は人にあげるのにも気を使うほどの出来なのである。これでは栽培する気になれない。多分、温度と湿度の関係だと踏んでいるのだが。

 コンフィダンスの樹勢はどうか。今わがハウスで最も勢いのある品種を挙げるとまずメルヘンケーニギン、あけぼの、ジェミニ、魅惑、武州、レッドライオン、フロー ジン'82、コンフィダンス、シージャックあたりになるだろう。この中で秀花率でいくと、圧倒的にメルヘンケーニギンで、反対に駄花率でいうとコンフィであり、シージャック、レッドライオンになる。切花にしても花数では十分の筈が、駄花ばかり取れるから商業用には通用しないのである。


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